被写体を可愛く(かっこよく)写す5つのポイント
短時間でいかに笑顔を引き出せるかが勝負
初めましての知らない男の人にカメラを向けられて緊張しないのは撮影慣れしたプロのモデルさんくらいなものです。普通は緊張して当たり前なので、いい表情を撮るにはまずアイスブレイクをしながら徐々に緊張を和らげる必要があります。時間があるならゆっくり話でもして関係を構築しながら警戒心を解いてから撮影出来たらいいのですが、大抵の撮影はタイムリミットがあります。一流芸能人のWEB取材記事の撮影なんかだと本当に短い時は撮影時間は5分で3カット撮影したりなんてこともあります。それでも、絶対に失敗は出来ないので、限られた時間内でいい表情の写真を必ず撮らなければいけないのがプロとしての仕事なのです。
僕の学生時代の卒アルの写真は笑顔が引きつっていて、なかなか開きたくないのはカメラマンのせいと言ったらあまりに酷ですが(笑)、卒アルのカメラマンなんて1人の生徒につき1分くらい?でいい表情を撮らないといけないのです。だから緊張が抜けない学生に何分も時間を取っていられないのです。
フォトグラファーになった今でも自分が写るのはあまり得意でないのですが、そんな被写体の気持ちがわかる分、人の表情をよく撮る事にはこだわりがあり、状況に応じて色々なやり方をします。まずは、笑顔を引き出すために僕自身が行っていることをご紹介します。
1.冗談を言って笑わせる
単純に相手を笑わせる事が出来るかです。キャラが立っている方なんかは自然にやっているので特に難しいと思わないかもしれませんが、向き不向きがあると思います。ちなみに、僕は地味ですし馬鹿やったりするのはあまり得意ではないですが、会話の中で意識しています。(笑
laugh(口を開けて笑う)の顔が撮りたいのか、smile(口を閉じて微笑む)が撮りたいのか、はたまたguffaw(爆笑)が撮りたいのかによっての使い分けはテクニックが必要かと思いますが、自然な表情って意味では本当に笑わせる事が一番です!
2.褒める
これは慣れないうちは常に意識してください。昔ながらの大御所カメラマンは、被写体を叱ったり厳しくして褒めることは滅多にないような印象もありますが、当たり前ですがそんな状況で自然な笑顔は普通出来ません。褒めることは警戒心を解いて空気をよくすること。笑顔を引き出す準備です。
3.形状的に笑顔の作り方を指示する
例えば写真を撮るときに、「笑って〜」と言われて笑顔を作ったのに、写真を見たら全然笑えてなかった。もっと笑ってるつもりだったのに。といった経験はないでしょうか。思っているよりも大胆に笑ってしまっていいということを伝えてあげます。
伝え方は具体的に「口を開いて口角上げて!歯見せちゃおう!」「目が笑ってなーい!(笑」などと伝えてあげると、それなりに笑顔に見えるものです。それこそ、1人1分で次々に卒アル写真を撮るみたいな時は、この方法しかないかもしれません。
4.リズムよく撮って気分を乗せる
例え最初はうまく表情が作れてなくても、ポーズが決まってなくても、リズムよくたくさんシャッターを切ることで、不安でいっぱいの被写体に「間違ってないから大丈夫だよ」というメッセージになり、段々と不安が解消され楽しくなってきます。撮影を楽しんでもらえるようにできたら、もう大丈夫です!
5.身体を動かす
心と身体は連動するので、緊張しているときは身体も緊張状態。固く小さな動きになってしまっています。
例えば、僕がよくやっていることとしては、最初に「浮き写」を撮るという方法があります。ジャンプする事でヘソの下の丹田が下がり、緊張が緩和されます。身体の緊張状態を解けば心の緊張もほぐれます。撮れた写真も見せてあげて、もっとよくするにはジャンプした時につま先を伸ばして前傾姿勢にといった指示をすることでそのことに集中するので、気づいたら緊張どころか楽しくなっています!
余談ですが女優の「のんちゃん(元能年玲奈さん)」を撮影した時は、本当はもちろんそんなことさせなくたってばっちりいい表情を作ってくれるのですが、「あまちゃん」のイメージが強すぎてやっぱりジャンプはさせてしまいました。(笑
デメリットは髪が乱れたり汗をかくので、その後少しケアする必要があります。
モデルは違いますが、浮き写の見本をいくつかご紹介します!
笑顔は表情の変わらない美人よりも目を惹くものです。だからこそ、難しく考えずに、その場を楽しみながら自然に笑って欲しい、と僕は言いたいです。
1〜5でご紹介した方法は、うまく掛け合わせながらやるとより効果的です。例えば、リズムよく撮りながら褒めたり、冗談を言いながら身体を動かしてもらうなどです。
最後に、極端なことを言いますが、写真に写る方は写真の良し悪しなんてそれほど重要ではありません。ちょっとくらいブレてたって、背景の景色がちゃんと写ってなかったって表情がよかったらそれでいい。そんなものです!カメラを学んでいると意識が写真としての完成度にどんどん行ってしまいがちですが、被写体の気持ちを考えて「いい写真」とは何か、今一度問いかけてみてもいいのかもしれません。